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名古屋高等裁判所 昭和52年(ネ)7号 判決 1977年10月27日

控訴人 内田正利

控訴人 中島アサ子

右控訴人両名訴訟代理人弁護士 東浦菊夫

古田友三

被控訴人 服部隆一

<ほか二名>

右被控訴人ら三名訴訟代理人弁護士 白井俊介

主文

原判決を次のとおり変更する。

一1  被控訴人らが控訴人内田正利に賃貸中の別紙第一目録記載の土地の地代は昭和五〇年四月一日以降一か月金二五、四〇〇円であることを確定する。

2  被控訴人らが控訴人中島アサ子に賃貸中の別紙第二目録記載の土地の地代は昭和五〇年四月一日以降一か月金一七、一五〇円であることを確定する。

二  被控訴人らのその余の各請求を棄却する。

三  訴訟費用は第一・二審を通じこれを五分し、その三を控訴人らの負担とし、その二を被控訴人らの連帯負担とする。

事実

一  控訴人ら代理人は「原判決中控訴人ら敗訴部分を取消す。被控訴人らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は第一・二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人らの訴の一部取下に同意した。

被控訴人ら代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」との判決を求め、なお、被控訴人らが控訴人らに対して金員の支払を求める部分の各訴(原判決事実摘示中請求の趣旨一項の2、二項の2)を取下げた。

二  当事者双方の事実上、法律上の主張並びに証拠関係は、次のとおり追加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これをここに引用する。

(主張)

1  控訴人ら

原判決事実摘示中被告らの主張のとおり、控訴人らの本件各借地についてはいずれも地代家賃統制令の適用を受け、その地代は同令五条の停止統制額によるべきであり、原判決が、裁判による地代の確定に当っては右の統制額の拘束を受けないと判断したのは、法令の解釈適用を誤ったものである。因みに、本件各借地の地代の各停止統制額は次のとおりである。

控訴人内田につき、月額金一五、〇九五円

控訴人中島につき、月額金一〇、〇六八円

註 (A) 昭和四八年度固定資産課税標準額(昭和五〇年度における固定資産評価額が昭和四八年度の固定資産課税標準額を超えるので、後者が基準となる。)

(B) 昭和五〇年度の固定資産税額

(C) 昭和五〇年度の都市計画税額

2  被控訴人ら

地代家賃統制令の適用を受ける借地であっても、裁判によって地代を定める場合は、同令五条の停止統制額に拘束されることなく、自由にその公正、妥当な金額を決することができることは原判決の説示するとおりであり、また、最高裁判所昭和五一年六月三日第一小法廷判決(最高裁判所民事判例集三〇巻六号五七一頁)その他多数の判例の示すところである。

(証拠関係)《省略》

理由

一  被控訴人らが別紙第一目録、同第二目録の各土地を所有(持分三分の一ずつの共有)し、同第一目録記載の土地を控訴人内田に、同第二目録記載の土地を控訴人中島にそれぞれ賃貸していること、右の各地代は、昭和五〇年三月までは控訴人内田の借地について一か月金二二、九二四円、控訴人中島の借地について一か月金一五、九四四円であったが、被控訴人らは昭和五〇年三月控訴人らに対し、同年四月一日から右各地代を控訴人内田につき一か月金三四、三八六円に、控訴人中島につき一か月金二三、九一六円にそれぞれ増額する旨の意思表示をし、右各意思表示が同年三月中に控訴人らに到達したことは当事者間に争いがない。

二  ところで、控訴人らの右各借地が建物所有を目的とするもので、その各借地契約の成立及び地上建物の存在が昭和二五年七月一〇日以前からであることは当事者間に争いがなく、《証拠省略》によれば、その地上建物はいずれも居宅であることが認められる。してみると、本件各借地については地代家賃統制令の適用を受ける関係にあるところ、同令一〇条によれば、同令の適用のある借地又は借家につき裁判、裁判上の和解又は調停によって地代又は家賃の額を定める場合には、必ずしも同令四条、五条の統制額に拘束されることなく、これを超えて適正な額を定めうるものと解するのが相当であり、これに反する控訴人らの主張は採用することができない。ただ、この場合右の適正な額というためには、同令の趣旨を尊重し、当該借地又は借家に適用される統制額をも考慮に入れた相当の金額であることを要するものというべきであるから、以下右のような見地に立って本件各地代の適正額を検討することとする。

三  原審における鑑定の結果によれば、時価を前提にした本件各借地の借地権価格につき、いわゆる積算式評価法を適用し、それに従前の賃料額、値上げの推移等を勘案して算出した地代額は、いずれも昭和五〇年四月一日当時控訴人内田の別紙第一目録記載の土地につき一か月金二六、七五五円、控訴人中島の別紙第二目録記載の土地につき一か月金一八、〇五三円であると認められる。しかし、《証拠省略》によって明らかな右各土地の昭和五〇年度における固定資産税額等を基準にして、「地代家賃統制令による地代並びに家賃の停止統制額又は認可統制額に代るべき額等を定める告示」(昭和四九年建告第六二四号)第一によってその統制額を算出すると、控訴人ら主張のとおり、控訴人内田の借地については一か月約金一五、〇九五円、控訴人中島については一か月約金一〇、〇六八円となることが認められ、これら統制額をも考慮に入れると、その適正な地代額は、控訴人内田の借地につき一か月金二五、四〇〇円、控訴人中島の借地につき一か月金一七、一五〇円をそれぞれ相当とすべきものと認める。

四  そうすると、被控訴人らの控訴人らに対する前記各賃料増額の意思表示は、それぞれ右限度において効力を生じたものというべく、それらを超える部分の本訴各地代確定の請求は理由がなく、該各部分の請求はこれを棄却すべきものである。

よって、控訴人らの本件各控訴は一部理由があるから、原判決を変更することとし、(なお、被控訴人らは、本訴各請求のうち控訴人らに対して金員(地代)の支払を求める部分の各訴を当審において取下げたので、原判決中右給付請求の各一部を認容した部分は、右訴の取下げによって失効した。)訴訟費用の負担につき民訴法九六条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 村上悦雄 裁判官 深田源次 上野精)

<以下省略>

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